小児歯科学雑誌
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浸潤麻酔の有無が小児の顔面表情変化に及ぼす影響
第1報充填処置時の年齢群別の比較
山内 哲哉土屋 友幸横井 勝美渡辺 直彦黒須 一夫
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1994 年 32 巻 4 号 p. 703-714

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抄録
浸潤麻酔の有無が小児の顔面表情変化(瞼・眉・額の変化)に及ぼす影響を明らかにするために充填処置時の年齢群別の比較分析を行った.被験者は,3歳から6歳までの園児20名,6歳から10歳までの児童20名計40名である.調査方法は,浸潤麻酔下ならびに無麻酔下で乳臼歯部に窩洞形成後,成形充填を行い,その時の小児の顔面表情変化を浸潤麻酔の有無によって使用群(除痛群)40症例と不使用群(非除痛群)40症例に分類し,観察を行った.
その結果を要約すると,以下のようであった.
1.非除痛群:被験者全体では,額,瞼・眉の3部位ともに,タービン・エンジンの切削処置とバキューム・エアーの補助処置間で多くの有意差が認められ,切削処置で大きく補助処置で小さな顔面表情を表出していた.また,年齢群別の比較でも同様な結果が認められた.
2.除痛群:被験者全体では,切削処置の額と補助処置間において,年齢群では,園児・児童群とも眉のタービンとエアー間で有意差がみられたが,非除痛群に比べ処置間で有意差の認められる項目数は減少していた.
3.除痛群と非除痛群の比較:全体では,額・瞼・眉の3部位ともに,除痛群が非除痛群に比べ,低い得点を示し,顔面表情変化の抑制効果がみられた.園児と児童の比較においても,同様な傾向がみられたが,顔面表情変化の抑制効果は園児群で顕著であった.
4.浸潤麻酔と非除痛群の切削処置との比較:園児では,額・瞼・眉のほとんどの部位で,浸潤麻酔に比べ非除痛群の切削処置の顔面表情変化が高い得点を表出していた.園児では,額と眉で浸潤麻酔時の変化が,非除痛群の切削処置よりも大きくなっていた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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