抄録
1979年9月-1994年3月までに,新潟大学歯学部小児歯科外来を乳歯の外傷で受診した308名520歯を対象として,乳歯外傷の実態調査を行った.また,後継永久歯の萌出をみた38名65歯を対象とし,後継永久歯に与える影響について調べた.
1)受傷時年齢は2歳が76名(24.7%),1歳が62名(20.1%)と1,2歳が多く,男女比は1.75:1を示した.
2)受傷部位は上顎乳中切歯が374歯(71.9%)を占め,2歯以内の受傷が多かった.受傷原因は転倒が多く,受傷から来院までの期間は受傷の翌日が最も多かった.
3)受傷状態は脱臼が182歯(35.0%),動揺160歯(30.7%),破折145歯(27.9%)であった.処置内容は経過観察が最も多く,ついで整復固定,抜歯の順であった.
4)後継永久歯に影響が現われたのは65歯中10歯であり,後継永久歯の影響の発現率は15.4%であった.
5)受傷状態別では,完全脱臼,陥入,挺出でやや高い影響の発現率を示した.受傷時年齢との関係では,低年齢時の受傷は歯冠形成に,年齢が高い場合は歯根形成や萌出に影響を与えるようである.
6)乳歯外傷は,受傷時年齢,受傷状態にかかわらず,後継永久歯へ交換するまでの長期間にわたる経過観察が重要である.