小児歯科学雑誌
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顎骨骨折を伴う小児の外傷について
-骨折部位における後継永久歯の動向-
園本 美惠萩原 智子西村 佳容子新司 佳世山尾 雅朗大谷 敬三白數 慎也嘉藤 幹夫大東 道治菊池 優子四井 資隆古跡 養之眞
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キーワード: 外傷, 顎骨骨折, 後継永久歯
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1997 年 35 巻 5 号 p. 829-838

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抄録
1985年から1994年までの10年間に大阪歯科大学附属病院歯科放射線科を受診した12歳以下の患児945例を対象に統計学的集計を行い,以下の結果を得た。
1.疾患別分布は,嚢胞,外傷,炎症,腫瘍,唾液腺疾患,顎関節疾患,その他の順で少なくなった。
2.外傷症例は男女比1.4:1,顎骨骨折を認める症例は男女比1.6:1であった。
3.外傷症例は男児では混合歯列期で多く,女児では乳歯列期で多かった。
4.受傷月は春夏に多く,冬が少なかった。
5.来院経路は医科の病院からの紹介が最も多かった。
6.受傷日から1週間以内に来院した症例は外傷症例で86.7%,そのうち顎骨骨折を認める症例では85.3%であった。
7.受傷原因は,転倒が最も多かった。
8.顎骨骨折は下顎骨骨折が最も多かった。
9.顎骨骨折があり,骨折部位に永久歯歯胚を含む症例のうち,長期経過観察を行っているものは少なかった。
10.骨折線が歯胚を横断している場合は歯根の形成阻害があるが,歯冠部についてはあまり影響はないと思われる。また,骨折部位に大きな転位がある場合は歯の位置異常,萌出遅延,歯根の形成異常が認められたが,転位が小さい場合は正常に萌出しており,歯の形態への影響はほとんどないようである。
小児では,外傷の症例では経過観察が重要である。特に骨折部位に永久歯歯胚を含む場合は,その永久歯の萌出が完了するまでの経過観察が必要である。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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