抄録
乳幼児の口腔機能発達に適した食物物性を検討するためには,乳幼児の口腔の形態に基づいたプランジャーと容器を用いた試験方法の開発が必要と考えた結果,舌での食物の認知や押しつぶしの際の口蓋と舌運動との関係を考慮したプランジャーと容器の開発を行った。プランジャーと容器の作製にあたって,出生後5か月から12か月までの間に,同一個人で少なくとも4か月以上継続して採得できた9名(男子4名,女子5名)の上顎石膏模型(48個)を資料として用いた。口腔模型計測より,プランジャーは,幅径を傍歯槽堤部幅径の計測結果から16mmに,プランジャーの形態を舌が口蓋に押しつけられた時の形から球状に,プランジャーの接触面を舌が食物を介在して口蓋に押しつけるように接触していることから,球の最下点から2mmで輪切りにすることによってできる直径10.7mmの円とした。
容器は,計測結果の歯槽弓の最大幅径から,直径35mm円とし,上顎結節部に相当する歯槽の最後縁部を結ぶ長さより30mmで後方部を切った形とし,容器の高さは,内側半球の高さを傍歯槽部高径から7mmに,容器の底面からの高さを最大歯槽堤口蓋高径から10mmとした。内側半球の中心点は前方部口蓋長径の計測結果より,容器外形の円の中心から5mm前方においた。さらに,内側半球の底面(平面)の直径はプランジャーの接触面と同様に直径10.7mmの円とした。このプランジャーと容器の作製により,乳児の摂食にとって一番重要であり,基本となる舌で食物を口蓋に押しつけるといった動きに類似させた物性試験システムの構築が可能となった。