抄録
5歳の女児の舌にまれな骨性分離腫を認めた.来院の4日前,患児が舌根部の腫瘤に気づき,小児科医院を受診し当科を紹介された.全身的には異常所見はなく,舌正中より左方に1cm偏位した有郭乳頭付近に直径7mm,高さ4mmの硬い腫瘤を認めた.色調は周囲の粘膜と同一であった.CT検査では正中より僅かに左側の舌根部から咽頭腔にかけ小さな類円形で周囲組織より突出した高いCT値を有する像を認めた.同部のCT値は437H.U.を示し,これは石灰化物と推測された.舌良性腫瘍の臨床診断のもとに全身麻酔下で腫瘤を摘出した.摘出した腫瘤は正常な粘膜で覆われ,有茎性でその基部は3mmであった.摘出物は硬くメスで分割はできなかった.摘出した腫瘤のレントゲン写真は3つに分葉した不均一な不透過像を示した.病理組織学的には粘膜下に不規則な層板状構造を呈する成熟した骨梁と骨髄を有する骨組織がみられ,一部には造骨細胞を認めた.
分葉した骨組織間には疎な線維性組織が介在していた.病理組織学診断は骨性分離腫とした.過去の報告と本症例の64例を分析すると,口腔内にみられる骨性分離腫は,舌正中より僅かに左側の分界溝付近が多い,成熟した骨組織を示す,大きさは平均1.0cmである,女性に多い,20歳代に多い,ことなどが判明した.10歳未満例について検討すると,大きさが平均5.6mmと小さいことを除けば他の特徴は同様であった.