抄録
口蓋裂患児7名(Hotz床使用児4名,不使用児3名)と健康乳児(1名)を対象に超音波断層法B/Mモードによる吸啜運動の観察を行った.エコーウインドは顎下部に設定し,吸啜運動中の舌の矢状断および前額断画像を描出し,吸啜圧波形をMモード画像上に走破させた.矢状断観察時においては,Mカーソルを乳首の先端部と,舌背上でその前方約1cm,後方約2cmの3カ所に設定し,Mモード波形をオフラインで計測した.吸啜圧波形を基準に計測のための新たな時間軸を設定したところ,舌背3部位の上下動の時間差を求めることが可能であった.あわせて舌運動の深度を計測することで,吸啜時舌運動の波状成分を定量化し得た.エコーウインドを顎下部に設定することで,舌骨の上下動が確認でき,明確な嚥下反射誘発時を同定することができた.
7名の口蓋裂患児の哺乳運動は様々であった.5名に吸啜サイクルの延長を認めた.6名では舌背各部位の上下動が大きかった.さらに1名については舌背各部位の上下動の時間差が小さく,舌体全体が単純な上下動をしていた.Hotz床使用児のうち3名は,床非装着時に哺乳運動が誘発されなかった.非装着時の観察を行えた1名において,Hotz床使用時には認められなかった不規則な舌の動揺がみられた.
以上よりMカーソルの位置を変化させた超音波画像と吸啜圧波形を同時に記録することで,吸啜運動の総合的評価が可能であると考えられた.