抄録
小臼歯非抜歯でエッジワイズ装置により治療したAngle I級叢生症例において,治療前後の下顎結合部の形態変化を比較検討し,合わせて本治療方法の有用性を検討した.そして,次の結果を得た.
1.下顎結合部は有意に基底骨が舌側傾斜し,歯槽骨が唇側傾斜した.
2.基底骨の舌側傾斜は下顎の後退と負の相関,咬合平面の時計回りの回転と正の相関が認められた.
3.歯槽骨の唇側傾斜は下顎前歯の唇側傾斜と正の相関があった.
4.歯槽骨と基底骨のなす角度は有意に増加した.
5.下顎結合部の厚径はB点において有意に減少した.
6.下顎結合部の高径はB点,Id点,Lle点において有意に増加した.
7.B点とLle点における下顎結合部の高径の増加は咬合平面傾斜角の増加と負の相関があった.
8.Id点における下顎結合部の高径の増加は下顎切歯の唇側傾斜と負の相関,上下中切歯歯軸傾斜角の減少と正の相関があった.
以上の結果から,下顎結合部は柔軟な形態変化を示し,B点付近が骨のリモデリングの中心的役割を果たすことが示唆された.また,混合歯列期における叢生症例の治療計画の確立に際して,本治療方法が一考に値する臨床的手技であることが示された.