抄録
本研究の目的は,永久歯エナメル質初期齲蝕病変の再石灰化に及ぼすフッ化物およびキシリトールの效果について解明することである.再石灰化過程を種々の条件下で検討するためSingle thin section法およびpH-cycling法を用いたin vitro人工齲蝕モデルを応用した.得られた結果は次の通りである.
1.再石灰化能は未処理群と比較してNaF群およびキシリトール+NaF群で,有意な再石灰化が認められた.
2.キシリトール単独の再石灰化能では有意な差は認められなかった.
3.SEMで観察した再石灰化処理後のエナメル質の内部構造は,健全エナメル質とは大きく異なり正常なエナメル小柱が失われ,大型の棒状,板状の構造が出現した.
4.表層下再石灰化部およびエナメル質表層の付着生成物の微小領域エックス線回折による測定では大部分がハイドロキシアパタイト,そのであると同定された.