小児歯科学雑誌
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口腔内各部位のpHの変動に与える唾液の影響
鈴木 欣孝渡部 茂
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2001 年 39 巻 5 号 p. 1095-1099

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抄録

小児の齲蝕予防法を確立することを目的に,唾液が口腔内各部位のpHの変動にどのような影響を及ぼしているかについて検討を行った.pH測定部位は上顎第一大臼歯頬側面(UPB),下顎中切歯舌側面(LALi),上顎中切歯唇側面(UAB)とし,pH測定にはISFET電極を用いた.まず,pHと唾液分泌速度の関係を調べるために,UPBにおけるpHおよび反対側耳下腺唾液分泌量(Lashley Cup使用)を同時に測定した.
次にUPB,LALi,UABにおいてクエン酸による舌尖部刺激前後のpHを各部位同時に経時的に測定した.その結果,耳下腺唾液分泌速度の上昇とともにUPBにおけるpHは徐々に上昇した.唾液分泌速度は刺激後,約6.6秒で上昇を開始し,13秒後まで最も速い分泌速度を示した.pHはややそれに遅れて上昇を開始し,2分33秒後に最大値を示した.
一方,舌尖部刺激による口腔内3か所のpH変化はUPBとLALiにおいては,暫時上昇し,最大pHの平均値はUPBで6.32±0.38,LALiで7.17±0.12であった.しかし,UABについては,ほとんど変動が認められなかった.以上のことから,口腔内各部位のpHは唾液の影響を強く受けていることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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