小児歯科学雑誌
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ビンクリスチンおよびシクロフォスファミドがラットの歯根形成および歯周組織におよぼす影響
岡本 亜祐子河上 智美白瀬 敏臣大出 祥幸
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2002 年 40 巻 4 号 p. 641-656

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抄録
小児がんの治療に用いる抗腫瘍薬は,治療効果の反面副作用や障害などの問題が注目されている。
本研究は抗腫瘍薬の投与が歯根形成および歯周組織におよぼす影響を明らかにするため,硫酸ビンクリスチン(以下VCRとする)とシクロフォスファミド(以下CPAとする)をラットに腹腔内注射し,歯および歯周組織におよぼす変化を比較検討し,以下の所見を得た。
1.薬剤投与後の体重は,VCR群では対照群と同様の増加率を示したが,CPA群では緩やかな増加に止まり,生後19日目から対照群との間に有意差を認めた。
2.歯冠形態については,VCR群およびCPA群ともに同時期の対照群とくらべ著しい変化はなかった。
3.歯根形成は,VCR群は対照群と全観察期間を通して顕著な差はなかった。CPA群では,生後19日目では対照群にくらべ根長はわずかに短く,歯根端の形成を障害していた。さらに生後54日目では対照群にくらべ根長は明らかに短く,歯根形態は粗造な硬組織で形成され蜂巣状を呈していた。
4.歯槽骨改造は,VCR群と対照群との間に差を認めなかった。CPA群では,19日目で固有歯槽骨は肥厚していたが海綿骨はすう疎であり,54日目では歯根膜腔の拡大を生じていた。
以上より,抗腫瘍薬の投与により歯牙は1次的変化として歯根の短縮化などの組織変化を生じ,さらに継続し2次的変化として,機能的な障害がおこることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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