小児歯科学雑誌
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フッ化ナトリウム溶液洗口後における口腔内フッ素濃度の部位特異性
孫 泰一
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2003 年 41 巻 4 号 p. 710-718

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抄録

6名の健康な成人を対象に450ppmフッ化ナトリウム溶液洗口後,口腔に停滞するフッ素量と唾液分泌速度の関係および口腔内フッ素濃度の部位特異性について検討を行った.洗口後30分の唾液中フッ素濃度は,通常再石灰化反応を積極的に促進するといわれている濃度より低く,平均1ppm以下に減少していた.洗口後15,30,60分における唾液中フッ素濃度と唾液分泌速度との間には負の相関関係が認められた.午前零時に洗口後ただちに就寝させ,起床時(午前6時30分)の唾液中フッ素濃度を測定した結果,その平均値は覚醒時での実験の洗口30分後の値に近似していた.フッ素の口腔内停滞の部位特異性については,シーネの4か所に取り付けた寒天ホルダーに,一定濃度のフッ化ナトリウムを含む寒天を填入し,被験者の口腔にて一定時間唾液にさらした後,寒天中のフッ化ナトリウム濃度を測定した.その結果,half-time(元の寒天中フッ素濃度が1/2になる時間)は覚醒時,睡眠時ともに上顎前歯部唇面が最も長く,下顎前歯部舌側は短かった.
本研究の結果以下の結論を得た.1.洗口後の唾液中フッ素濃度は唾液分泌速度に影響された.2.口腔にフッ素を長く停滞させるには就寝前に洗口することが望ましい.3.洗口後のフッ素濃度には部位特異性がみられ,上顎前歯部唇面はフッ素の停滞時間が長かった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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