顎関節症あるいは顎運動異常を伴う小児の顎運動の特徴を究明することは,低年齢期において顎関節症の予測,あるいは治癒過程の評価などに有用である.
3次元顎運動解析装置を用いて顎運動を解析する際,両側の平均的顆頭点が使われるが,運動軌跡から求めた顆頭点との関係が明らかにされていない.
そこで,平均的顆頭点を中心に1mm間隔で80mm*80mmの範囲の任意点(合計6400点)の中から閉口時から最大開口時に至る顎運動路が最小距離となる1点を3次元顎運動から求めた顆頭点(運動中心点)とし,運動中心点の位置と平均的顆頭点との位置関係を測定したところ以下の知見を得た.
従来の顎運動解析に多く用いられてきた平均的顆頭点でなく,中心軸の基盤となる運動中心点を求めた.顎関節症児において関節円板転位側と非転位側の運動中心点の位置は異なり,非復位側の運動中心点は平均的顆頭点から大きく変位していることが明らかになると同時に運動中心点が基となる中心軸によって関節頭の微細な運動が評価できることが示唆された.