小児歯科学雑誌
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逆生埋伏上顎中切歯の開窓牽引処置についての2例
角本 法子鈴木 淳司谷口 芳子蔵本 銘子光畑 智恵子香西 克之
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2007 年 45 巻 1 号 p. 118-124

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抄録
埋伏歯の歯軸方向が咬合平面より上方に歯冠方向を向けている逆生埋伏歯は,従来は抜歯適応と考えられており,とくに歯根の著しい彎曲を伴う逆生埋伏歯は,牽引処置の難症例とされてきた.今回著者らは,上顎永久中切歯の萌出遅延を主訴に広島大学病院小児歯科診療室を紹介受診された逆生埋伏上顎永久切歯の症例2例に対して,積極的な開窓牽引処置を行い良好な結果を得たので報告する.
症例1:9歳男児,上顎右側側切歯の異所萌出を主訴に近医を受診したところ,エックス線診査により上顎左側中切歯および側切歯の逆生埋伏を指摘され,紹介により当科を受診した.開窓後,リンガルアーチおよびマルチブラケットを用いて3年3か月の牽引処置を行い,上顎左側中切歯を歯列内へ誘導することができた.
症例2:11歳女児,上顎左側中切歯の萌出遅延を主訴とし,紹介により来院した.エックス線診査により,上顎左側中切歯の逆生埋伏に加え,歯根が極度に彎曲していた.症例1と同様,開窓後,リンガルアーチおよびマルチブラケットを用いた牽引処置を行い,1年11か月後に上顎左側中切歯を歯列内へ誘導することができた.いずれの症例においても,疼痛や根尖性歯周炎などの臨床症状は全くみられず,経過は良好である.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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