抄録
近年,口唇閉鎖習慣を持たない小児が増加していると言われている. また,「噛まない」「噛めない」「飲み込めない」などの摂食機能の拙劣化を疑わせる訴えも保護者,保育士などから多くきかれる. そこで,今回,口唇閉鎖獲得のために必要である口唇閉鎖力と咀嚼機能の一指標である咀嚼能力との関連性を調べる目的で,仙台市内の保育園5か所における年長児クラス(4~6歳)92名において口唇閉鎖力,咀嚼能力の測定および前歯部咬合状態の評価を行い,それぞれの関連を調べたところ,以下の結果を得た.
1.口唇閉鎖力と咀嚼能力値および咀嚼効率との間に正の相関が認められた.
2.咀嚼効率が低いほど咀嚼回数が多い傾向にあった.
3.咀嚼回数と咀嚼能力値との間には相関は認められなかった.
4.口唇閉鎖力,咀嚼能力値は男女において有意な差は認められなかった.
5.口唇閉鎖力,咀嚼能力値は咬合の種類による有意な差は認められなかった.
本研究より,口唇閉鎖力が咀嚼能力と正の相関があることが示され,口唇閉鎖力が咀嚼能力評価の一指標となり得ることが示唆された.