小児歯科学雑誌
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出産歯抜去後に硬組織を含むエプーリスを認めた1例
吉田 光秀工藤 理子真柳 秀昭
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2007 年 45 巻 4 号 p. 536-540

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抄録
出産歯抜去後に硬組織を含むエプーリスを認めた症例を報告する。患児は初診時生後44日齢の女児で,出生時,下顎乳中切歯相当部に2つの歯牙様の硬組織が認められ,左側の歯牙様の硬組織は生後3日目に小児科にて抜去された。その後同部位に粘膜腫瘤がみられ精査のため当科を受診した。初診時,右側乳中切歯相当部に出産歯と思われる歯牙様の硬組織がみられ,左側乳中切歯相当部には有茎性の粘膜腫瘤がみられた。哺乳障害等は認められず,経過観察を行った。生後約2か月半時,腫瘤内に歯牙様の硬組織がみられ,生後8か月時に腫瘤部分から出血することがあるため,粘膜腫瘤を切除摘出し,生後3日目に抜去された歯牙様の硬組織とともに病理組織検査を行った。生後3日目に抜去された歯牙様の硬組織は,臨床所見および病理組織学的所見より出産歯と診断された。
出産歯抜去後に認められた粘膜腫瘤は病理組織学的所見より肉芽腫性エプーリスと診断され,出産歯抜去後の刺激により同部位に炎症性反応が起こり発現したものと考えられた。
エプーリス部にみられた歯牙様硬組織には不規則な象牙細管構造,骨様セメント質が認められ,出産歯抜去後に残存した歯乳頭あるいは歯髄に連続する下方の組織に象牙芽細胞の分化がおこり,骨様象牙質,骨様セメント質の形成が行われたと考えられた。
先天性歯の自然脱落あるいは抜去後にはその部位に歯牙様の硬組織がみられることがあるので,その後の経過観察が重要である。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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