抄録
乳幼児期から中学・高校まで長期間にわたり定期的に鶴蝕予防中心の歯科医療を受けた者の歯科恐怖は低い,という仮説を検証することを目的に,O小児歯科医院(大阪府茨木市)を定期健診のために受診した12-18歳の患児107名(男児57名女児50名;平均年齢14.4±1.4歳,初診時平均年齢4.2±3.0歳)を調査対象とし,Dental Subscale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を用いて歯科恐怖に関する調査を行ったところ,以下の結論を得た。
1.CFSS-DS合計点の平均値は22.8±8.0点であり,すでに報告されているわが国の疫学的調査結果より低い値であった。また,男女間に有意差は認めなかった。
2.本研究対象者における歯科恐怖レベルは,他国の調査結果と比較しても低く,特に北欧諸国における数値に近似していた。小児期から長期間の齲蝕予防中心の歯科医療を受療すると歯科恐怖の発現が北欧レベルまで抑制されると考えられる。
3.CFSS-DSの項目別平均点の数値が高い5項目は順に,「歯をけずられること」,「注射」,「息がつまること」,「歯をけずる音」,「歯をけずっているのを見ること」,「誰かが器具を口に入れること」であった。
4.歯科受診行動に関する3項目においては,CFSS-DS合計点との間にいずれも有意な正の相関を認めたため,歯科恐怖は受療行動と関連があることが示唆された。