2016 年 31 巻 5 号 p. 1136-1140
【目的】侵襲の大きな手術後には、血清亜鉛値の低下が報告されている。加えて血清亜鉛値の低下は、食欲不振の誘因となり得ることが報告されている。今回我々は、手術前後における血清亜鉛値の推移を調査した。また食欲低下に陥っている症例に対し経口的に亜鉛を付加し、食欲不振の改善の検討を行った。さらに術後血清亜鉛値の維持と平均在院日数に及ぼす効果を検討した。【対象及び方法】対象は、開心術および冠動脈バイパス移植術を施行した39症例。術後の食欲不振症状の有無により群分けし、食欲不振群に対して亜鉛入りゼリー (Zn : 23mg / day) を付加した。一方、術後の食欲不振を認めなかった症例を対照群とした。術前・術後1日目および退院時に血清亜鉛値を測定し、両群における血清亜鉛値の術前からの推移と在院日数を比較検討した。【結果】術後食欲不振群に対し経口的に亜鉛を付加することで、血清亜鉛値は対照群と同等に推移し、食欲不振症状は改善した。平均在院日数は対照群と同程度であった。【結論】周術期食欲不振症例への亜鉛付加は、食欲の回復を認める可能性が示唆され、血清亜鉛値の低下を防ぎ、長期在院期間の防止に期待がもてるものと考えられた。