日本静脈経腸栄養学会雑誌
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特集
序論:脂肪乳剤の特集について
小山 諭
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2018 年 33 巻 2 号 p. 721-725

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抄録

脂肪乳剤が国内で市販されてから数十年が経過した現在、必要な症例に対して適切かつ十分に使用されているのかは疑問である。脂肪の静脈内への投与は17世紀から実験的に試みられていたが、効果的な乳化剤の開発により1900年代に脂肪の静脈内投与への発展に結びついていった。1961年A. Wretlindが大豆油に卵黄レシチンを乳化剤として使用し、安全に使用できる脂肪乳剤を開発した。その後、n-6系脂肪酸の炎症活性を抑えるために、大豆油ベースのみではなく、ココナッツ油、オリーブ油、魚油などを組み合わせた製剤が開発されていった。脂肪乳剤の禁忌の根拠となっている文献はかなり以前の報告であり、実際には脂肪乳剤が投与できる状況もあり得る。また、日本ではn-6系脂肪乳剤しか市販されていないため、侵襲下の症例では使用されにくい状況であるが、カルニチンの併用などでn-6系脂肪酸のβ酸化を促進することで炎症反応を抑えられる可能性がある。

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