抄録
当科では2006年4月~2008年3月において,術中に門脈圧測定を行い,20 mmHgを基準として門脈圧の調整を行ってきた.同期間に肝移植を受けた成人レシピエント106例を対象とし (うち,100例で門脈圧を測定),Graft Recipient Weight Ratio (以下,GRWR),術中の最終門脈圧,術後腹水量,腹腔ドレーン抜去時期について検討した.GRWR 0.8を基準に2群に分けて生存率を比較したが有意差は認めず,GRWRは腹水量,ドレーン抜去時期に対しても相関しなかった.一方,最終門脈圧が20 mmHg以上の2症例はともに術後早期に門脈圧亢進に端を発すると思われる合併症を起こし,1例は死亡に至っていた.また,最終門脈圧は腹水量に軽度の相関を呈した.門脈圧亢進に起因する合併症から死亡に至った症例が15~20 mmHgに調整した症例にも存在し,15 mmHgを基準に生存率を検討したところ,2群間において生存率に有意差を認めた.さらなる肝移植成績の向上には,各症例に応じた至適な門脈圧の設定が重要な因子である.