日本門脈圧亢進症学会雑誌
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16 巻, 1 号
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Editorial
特集:肝移植と門脈循環
原著
  • 谷合 信彦, 吉田 寛, 平方 敦史, 川野 陽一, 柿沼 大輔, 神田 知洋, 真々田 裕宏, 秋丸 琥甫, 田尻 孝
    2010 年16 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    部分的脾動脈塞栓術(Partial splenic embolization: PSE)は門脈圧亢進症の汎血球減少,食道胃静脈瘤治療など広く用いられている.今回,肝移植前後におけるPSEの位置づけを検討した.脾容量は術前PSE群では移植後44.6%,術後PSE群では42.3%とほぼ同様に縮小した.PSEと肝移植を一連の治療と考え,全治療と定義した.血小板数の変化率を全治療1年後において比較すると,術前PSE群は3.21倍に増加したが,術後PSE群は1.58倍にしか増加していなかった.シャントを有する症例では術前PSEにて術中術後のグラフト門脈血流量低下を予防した.移植のみでは十分に回復されない脾機能亢進症に対してPSEを追加施行することで更に改善が得られた.また,術前PSE施行はシャントを有するsmall-for-size graft対策になりうる可能性があると思われた.
  • 堀 智英, 尾池 文隆, 小倉 靖弘, 小川 晃平, 八木 真太郎, 飯田 拓, 吉澤 淳, 秦 浩一郎, 海道 利実, 岡島 英明, 瀬川 ...
    2010 年16 巻1 号 p. 13-18
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    当科では2006年4月~2008年3月において,術中に門脈圧測定を行い,20 mmHgを基準として門脈圧の調整を行ってきた.同期間に肝移植を受けた成人レシピエント106例を対象とし (うち,100例で門脈圧を測定),Graft Recipient Weight Ratio (以下,GRWR),術中の最終門脈圧,術後腹水量,腹腔ドレーン抜去時期について検討した.GRWR 0.8を基準に2群に分けて生存率を比較したが有意差は認めず,GRWRは腹水量,ドレーン抜去時期に対しても相関しなかった.一方,最終門脈圧が20 mmHg以上の2症例はともに術後早期に門脈圧亢進に端を発すると思われる合併症を起こし,1例は死亡に至っていた.また,最終門脈圧は腹水量に軽度の相関を呈した.門脈圧亢進に起因する合併症から死亡に至った症例が15~20 mmHgに調整した症例にも存在し,15 mmHgを基準に生存率を検討したところ,2群間において生存率に有意差を認めた.さらなる肝移植成績の向上には,各症例に応じた至適な門脈圧の設定が重要な因子である.
総説
  • —shear stress理論と過小グラフトへの対策の変遷—
    佐藤 好信
    2010 年16 巻1 号 p. 19-25
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    成人生体肝移植過小グラフトにおいては,移植後も高度門脈圧亢進状態が持続し,移植グラフトの再生や肝機能に大きな影響を及ぼすことが知られている.本論文では,肝切除後肝再生において我々の提唱してきた理論,Matrix 関連遺伝子であるPAI-1 mRNAとshear stress関係,さらに過剰なshear stressの肝障害を引き起こすメカニズムをHO(Heme-oxygenase)-1-COシステムにおけるビリルビン代謝から論じた.また上記の基本理論に基づいた過小グラフトの外科としての対策についても述べた.移植後門脈圧亢進状態理解の一助になれば幸いである.
  • —脾臓/肝臓容積比変化を中心に—
    近森 文夫, 国吉 宣俊, Seigo Nishida, Andreas G. Tzakis, 河島 孝彦, 高瀬 靖広
    2010 年16 巻1 号 p. 26-30
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    脾機能亢進症に対する肝移植の影響について脾臓/肝臓容積比(spleen/liver volume ratio: S/L ratio)変化を中心に検討した.肝移植後も脾腫と門脈側副血行路は改善するものの多くの症例で残存した.S/L ratioは血小板数とよい負の相関を示した.肝移植後S/L ratio > 0.35の場合< 0.35の場合に比べて血小板減少(<100×103/mm3)再発率が有意に高く(p < 0.01),S/L ratioは脾機能亢進症の良好な指標となることが示された.肝移植後の予後からみても,S/L ratioを下げ,門脈血行異常を是正しておくことは意義あることと思われた.
原著
  • 岡島 英明, 大矢 雄希, 李 光鐘, 猪股 裕紀洋
    2010 年16 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    当科でフォローしている小児生体肝移植術後門脈閉塞症6例を対象にその現状と問題点について検討した.現疾患は全例胆道閉鎖症で移植時年齢は6例中5例が乳児期であった.診断されたのは移植後平均1年3カ月で,診断前臨床症状としては難治性腹水がみられた1例のみであった.治療はバルーン拡張術が試みられたが全例で不成功に終わった.その後3例で消化管出血を認め,2例で脾腎シャント手術を行い改善がみられたが,1例はportopulmonary hypertension(PPHTN)を合併しており,再移植を行ったが右心不全のため失った.難治性腹水の1例は利尿剤と経過観察で改善し,他の2例は観察期間8年と12年の現在,臨床症状を認めていない.本症は発症前において臨床症状に乏しく,一旦発症すれば難治性で,消化管出血,肺血管合併症をきたすと致死的となるため,定期的に頻回のドップラー超音波検査など早期発見・早期治療が肝要と考えられた.
  • —実験的検討—
    橋本 直樹
    2010 年16 巻1 号 p. 36-40
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    肝再生因子としての門脈血の中で,小腸血と膵ホルモンでは,どちらが肝にとって大切かを検討するため雑種成犬(10~15 kg)に以下のモデルを作成した.①脾静脈血のみをsystemicへdiversionするsplenocaval shunt(SC shunt),②小腸血のみをsystemic diversionする小腸自家移植(MC shunt),③門脈血をすべてsystemicへdiversionするPortacaval Shunt (Eck),④Sham ope (Control)を作成し,術後4週目,アミノ酸,肝ATP,肝血流,NH3を比較し,肝に対する影響を検討した.SC shunt, MC shuntともEckにみられるようなamino acid imbalanceや高NH3血症はみられなかった.しかし,肝ATPでは,SC shuntでは対照群に近似したが,MC shuntでは,対照群に比し有意に低値を呈した.以上より門脈血因子としては,小腸血の方が脾静脈血(膵ホルモン)より肝にとって重要なことが示唆された.それ故,小腸移植の際の静脈ドレナージとしては,SMV-IVCよりSMV-Portal吻合が望ましい.
総説
  • —過去8年間で経験した自験例の臨床経過と共に—
    松下 優美, 八木 実, 水落 建輝, 西浦 博史, 牛島 高介, 高木 章子, 浅桐 公男, 田中 芳明, 鹿毛 政義, 猪口 隆洋
    2010 年16 巻1 号 p. 41-47
    発行日: 2010/06/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    小児の肝前性門脈圧亢進症(以下,本症)は主に肝外門脈閉塞症(EHO:extra-hepatic portal obstruction)や,肝内presinusoidal blockをきたす先天性肝線維症(CHF:congenital hepatic fibrosis)に大別される.これらは小児領域での突然の消化管出血の原因疾患として重要である.本論文では,自験例2例を紹介し,本症の原因,診断および治療,小児領域における問題点を述べる.CHFの1例は13歳男児,吐血で発症し,その後EVL, EISを繰り返したが,胃静脈瘤の発達と白血球,血小板の低下のため5年後にHassab手術を施行した.EHOの1例は8歳女児.心房中隔欠損症(ASD)を合併しており,吐血で発症.高度食道静脈瘤でありEVL, EISの適応を検討したが,ASDへの影響を考え,Hassab手術を先行して行った.その後EISにて残存する食道静脈瘤の追加治療を施行した.
EISかEVLか
門亢症と胃粘膜病変
門亢症の緊急治療
新しいインターフェロン療法
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