抄録
胃全摘後の空腸静脈瘤が破裂し,その治療にEISが有効であった2症例を報告する.第1例はアルコール性肝硬変の67歳,男性.13年前に胃癌で胃を全摘し,Roux-en-Y法で再建した.吐血で搬送され,食道から空腸に連続する静脈瘤を認め,空腸部位にフィブリン栓が観察された.食道静脈瘤からEISを実施し,その際には空腸壁に沿った供血路が描出された.3か月後の内視鏡検査では静脈瘤は消失していた.第2例はC型肝硬変の62歳,男性.10年前に同様に胃癌で胃全摘術を施行.吐血で搬送され,吻合部空腸側からの出血が観察された.F2の食道および空腸静脈瘤を認めたが,明らかな出血源は同定できず,それぞれの静脈瘤にEVLを施行した.CTで静脈瘤の供血路を確認後,残存する空腸静脈瘤にEISを施行した.4か月後の内視鏡検査では静脈瘤は消失していた.胃全摘後の空腸静脈瘤破裂例では,EISによって供血路まで塞栓することで,静脈瘤の消失が得られると考えられた.