日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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19 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 近森 文夫, 高瀬 靖広
    2013 年19 巻4 号 p. 173-178
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症では全身循環亢進状態となり,心係数(CI)の増加,全身血管抵抗係数(SVRI)の減少,動静脈血酸素含量較差(Ca-vO2)の狭小化を来す.CIはChild-Pugh scoreと正の相関を示し,プロトロンビン時間(PT),ヘパプラスチンテスト(HPT)と負の相関を示した.SVRIはアルブミン(Alb),PTやHPTと正の相関を示し,ICG15やアンモニア(NH3)と負の相関を示した.非高血圧性/高血圧性肝硬変症(LC)のSVRI(dynes・sec・cm-5/m2)は1653±475/2162±603 (p<0.01),Ca-vO2 (vol%)は2.8±0.9/3.1±1.0 (p<0.05),全身血管コンプライアンス(AC)(ml/mmHg)は1.3±0.5/0.9±0.3(p<0.01)であった.高血圧性LCは高齢で,HCV陽性例が多く,肝機能の保たれている症例が多く,全身血行動態的には循環亢進状態が減弱した状態となっている.高血圧性LCにおける薬物療法開始時にはこの複雑化した病態を考慮することが肝要である.
臨床研究
  • 石川 達, 窪田 智之, 木村 成宏, 堀米 亮子, 本田 博樹, 岩永 明人, 関 慶一, 本間 照, 吉田 俊明
    2013 年19 巻4 号 p. 179-181
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    血小板減少を伴う肝細胞癌に対し,部分的脾動脈塞栓術(Partial splenic arterial embolization: PSE)と肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization: TACE)を同時施行した症例の検討を行った.対象は血小板減少を伴う肝細胞癌症例に対し,TACEと同時にPSEを施行した術前血小板数5万/μl以下の23症例である.平均脾梗塞率は55.19%であり,術前平均血小板値は4.41万/μlで,術後平均血小板値は7.58万/μlに上昇した.血小板の上昇により,RFAを含めた穿刺治療は可能となった.血小板減少のためにTACE,RFAが困難な進行肝細胞癌症例に対し,PSEを同時併用することで,血小板を増加させ,治療を継続することができ,集学的治療の一環としてのPSEの有用性が示唆された.
症例報告
  • 中澤 学, 今井 幸紀, 塩川 慶典, 内田 義人, 藤井 庸平, 繁田 貴博, 打矢 紘, 平原 和紀, 近山 琢, 渡邊 一弘, 安藤 ...
    2013 年19 巻4 号 p. 182-186
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    胃全摘後の空腸静脈瘤が破裂し,その治療にEISが有効であった2症例を報告する.第1例はアルコール性肝硬変の67歳,男性.13年前に胃癌で胃を全摘し,Roux-en-Y法で再建した.吐血で搬送され,食道から空腸に連続する静脈瘤を認め,空腸部位にフィブリン栓が観察された.食道静脈瘤からEISを実施し,その際には空腸壁に沿った供血路が描出された.3か月後の内視鏡検査では静脈瘤は消失していた.第2例はC型肝硬変の62歳,男性.10年前に同様に胃癌で胃全摘術を施行.吐血で搬送され,吻合部空腸側からの出血が観察された.F2の食道および空腸静脈瘤を認めたが,明らかな出血源は同定できず,それぞれの静脈瘤にEVLを施行した.CTで静脈瘤の供血路を確認後,残存する空腸静脈瘤にEISを施行した.4か月後の内視鏡検査では静脈瘤は消失していた.胃全摘後の空腸静脈瘤破裂例では,EISによって供血路まで塞栓することで,静脈瘤の消失が得られると考えられた.
  • 町田 卓郎, 堀田 彰一
    2013 年19 巻4 号 p. 187-191
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    65歳女性.自己免疫性肝炎による肝硬変の診断にて他院通院中.平成23年4月,食道静脈瘤破裂,難治性腹水にて当院紹介.大量の腹水,食道静脈瘤,著明な脾腫,傍臍静脈シャント,さらに2か所に脾動脈瘤を認め,脾門側の動脈瘤は脾静脈へ穿破し脾動静脈瘻を形成していた.脾動静脈瘻が門脈圧亢進症増悪の原因と考えられたため,動脈瘤を含めた脾臓摘出術を検討したが,大量腹水と反復する肝性脳症,肝予備能から外科的治療は困難と判断された.内科的治療にも反応せず症状が増悪したため,経動脈的に脾動脈瘤,動静脈瘻を塞栓した.脾膿瘍,敗血症性ショックを併発したが,脾膿瘍ドレナージ術にて改善した.その後,肝性昏睡を繰り返すため傍臍静脈シャントに対してバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行し短絡路を閉塞した.腹水,食道静脈瘤,肝性脳症共に改善し,現在外来通院中である.
  • 新井 弘隆, 豊田 満夫, 高山 尚, 阿部 毅彦
    2013 年19 巻4 号 p. 192-195
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    今回我々は,脾動脈が非常に屈曲・蛇行の激しい末梢到達困難例において,high-flow type catheterと1.9Fr non-tapered microcatheterを用いたtriple coaxial catheter systemにより部分的脾動脈塞栓術(PSE)を完遂し,その後の肝細胞癌の治療を安全に施行しえたC型肝硬変の一例を経験したので報告する.
  • 長谷 聡一郎, 平松 靖史
    2013 年19 巻4 号 p. 196-199
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    84歳女性.主訴は腹部膨満感.骨髄異形成症候群で当院経過観察中.2か月前より腹部膨満感が急速に増悪して近医受診.USで高度脾腫と大量腹水貯留がみられ,利尿薬で制御不良のため当院受診.身長140cm,体重38.5kg.肝炎ウイルス陰性,アルコール摂取歴なし.肝機能はChild-Pugh gradeB(score 9点).腹部CT大量の腹水貯留と18×10cm大の高度脾腫および脾静脈,門脈の拡張,傍臍静脈の発達を認めた.内視鏡検査で食道胃静脈瘤(Lm, F2, Cb, RC0, Lg-f, F1, Cw, RC0)を認めた.当院で腹水穿刺を4回試みたがすぐに再貯留するため,部分的脾動脈塞栓術(PSE:partial splenic embolization)を施行した.PSE後,腹部膨満感や腹囲は経時的改善傾向を示し,画像上も腹水消失を認めた.肝機能はChild-Pugh grade A(score 5点)に改善.内視鏡検査で食道胃静脈瘤ともに消失した.CTで脾静脈,門脈本幹に部分的に血栓形成を認めたが,抗血小板療法施行にて経時的改善した.術後18か月後現在,腹水貯留や腹部膨満感の再燃なく経過観察中である.
テクニカルレポート
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