2018 年 24 巻 1 号 p. 50-56
当院で経験したEIS時に虚血性粘膜病変を来した食道胃静脈瘤症例5例について患者背景,血行動態,治療成績,予後をretrospectiveに検討した.治療部位は食道1例,胃4例であった.治療方法は食道静脈瘤の1例はAS法で,胃静脈瘤は全例がEVISであった.EVIS像をretrospectiveに検討すると,5例中3例で静脈系供血路以外の血管の造影が確認された.虚血性粘膜病変を来した部位は,AS例のみ下部食道で他は全て胃穹隆部であった.1例で輸血を要する貧血を認めたが死亡例はなく,全例が保存的加療のみで改善した.EISによる虚血性粘膜病変の合併率は,食道静脈瘤0.2%,胃静脈瘤5.6%であり,胃静脈瘤治療例の方が高かった.治療中は内視鏡画像,透視画像を確認しながら硬化剤を注入し,供血路以外の血管の描出や粘膜の虚血性変化を認めた際は,硬化剤注入を中止すべきと思われる.