日本門脈圧亢進症学会雑誌
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24 巻, 1 号
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特別寄稿
Editorial
総説
  • 宮島 篤
    2018 年24 巻1 号 p. 23-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    肝臓は再生能を備えた臓器として知られており,その高い再生能により生体肝移植が可能となっている.肝臓の一部を外科的に切除した場合の再生は,基本的には残存細胞の肥大と増殖による.一方,肝毒素や胆管結紮などによる肝障害においては,門脈周囲に胆管様細胞が多数出現する胆管増生(ductular reaction)を伴って肝臓が修復/再生されることから,この胆管様細胞に肝の幹・前駆細胞(Liver progenitor cell, LPC)が存在すると考えられていた.しかし,近年の細胞系譜解析から,胆管増生を伴う障害において新たに出現する肝細胞は既存の肝細胞に由来するという報告と胆管あるいはLPCから肝細胞が生じるという報告があり,肝細胞の再生とLPCとの関係については議論が続いている.肝臓の幹細胞は,肝細胞と胆管上皮細胞に分化する増殖性の細胞と位置づけられるが,そうした幹細胞が成体肝臓に存在するのか,また再生過程にも関与するのかといった観点から,最近の報告をレビューするとともに,胆管増生の生理的な意義に関する私どもの研究についても紹介したい.

  • 吉治 仁志
    2018 年24 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    門脈圧亢進症の原因は様々であるが,臨床的に最も多く遭遇する疾患は肝硬変である.肝硬変は慢性肝疾患の終末像として知られており,以前は不可逆性と考えられていたが,近年の研究から適切な治療を行うことにより可逆的に線維化が改善することが明らかにされている.ここ数年の間に非代償性肝硬変に対する様々な新規薬剤が上市され,肝硬変の治療はパラダイムシフトとも言える変化を遂げている.腹水に対するバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン,肝性脳症に対する難吸収性抗菌薬であるリファキシミンや亜鉛製剤,肝性脳症や筋けいれんに対するカルニチン製剤,血小板増加薬であるルストロンボパグ,門脈血栓症に対するアンチトロンビンIII製剤,掻痒感に対するナルフラファン,など多くの薬剤を個々の症例に応じて使い分けることが臨床医に求められている.本総説では,これらの新規薬剤を中心に最近の門脈圧亢進症に対する最近の薬物療法につき概説する.

  • 田嶋 強
    2018 年24 巻1 号 p. 38-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    バルーン閉塞下逆行性静脈瘤塞栓術(B-RTO)は,本邦において孤立性胃静脈瘤に対する第一選択治療となっているが,B-RTOは保険収載されていない.そこでB-RTOの有効性および安全性を明らかにするためにモノエタノールアミンオレイン酸塩(以下EO)第II相試験を実施した.治験デザインは多施設共同(8施設),非盲検,単アーム.治験期間は2014年8月~2015年10月(登録12か月,観察期間3か月).対象は胃静脈瘤症例45症例.対象症例は静脈瘤出血の既往の有無を問わない.選択基準,除外基準を別途定め,1治療あたりの5%EO溶液総注入量を0.4ml/kg以内とした.主要評価項目を治験終了時の内視鏡中央判定に基づく胃静脈瘤の消失割合,副次評価項目を治験終了時の造影CTによる胃静脈瘤の完全血栓化の割合とし,それぞれを4段階で評価した.治験薬の投与中止や死亡例はなく,治験を完遂し得た.主要及び副次評価項目ともに高い効果レベルが得られ,EOの有効性・安全性が確認された.2016年6月に治験データを以てPMDAに薬事申請し,2017年6月26日に薬事承認された.

原著
  • 杉浦 育也, 馬場 俊之, 魚住 祥二郎, 吉田 仁
    2018 年24 巻1 号 p. 42-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    孤立性胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性静脈瘤塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)が食道静脈瘤形態に及ぼす影響について検討した.B-RTO施行後の食道静脈瘤悪化は67例中15例(22.4%)に認められ,累積悪化率は6か月:15.3%,1年:22.9%,3年:29.3%,5年:36.4%であった.食道静脈瘤形態の変化は静脈瘤なし→F1:4例およびF2:2例(17.6%),F1→F2:6例(27.3%),F2→F3:3例(27.3%)であった.また食道静脈瘤出血は67例中5例(7.5%)に認められ,3か月以内の食道静脈瘤出血は5例中2例(40.0%)であった.B-RTO施行後の食道静脈瘤悪化に寄与する因子は血清アルブミン値<3.2mg/dlであった.孤立性胃静脈瘤に対するB-RTO施行後には施行前の食道静脈瘤形態にかかわらず食道静脈瘤悪化が認められることがあり,特に血清アルブミン値<3.2mg/dlの肝硬変ではB-RTO施行後早期から定期的な上部消化管内視鏡検査を行うことが望ましい.

臨床研究
  • 細川 泰三, 久保川 賢, 徳丸 佳世, 長田 繁樹, 佐藤 孝生, 木村 勇祐, 赤星 和也
    2018 年24 巻1 号 p. 50-56
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    当院で経験したEIS時に虚血性粘膜病変を来した食道胃静脈瘤症例5例について患者背景,血行動態,治療成績,予後をretrospectiveに検討した.治療部位は食道1例,胃4例であった.治療方法は食道静脈瘤の1例はAS法で,胃静脈瘤は全例がEVISであった.EVIS像をretrospectiveに検討すると,5例中3例で静脈系供血路以外の血管の造影が確認された.虚血性粘膜病変を来した部位は,AS例のみ下部食道で他は全て胃穹隆部であった.1例で輸血を要する貧血を認めたが死亡例はなく,全例が保存的加療のみで改善した.EISによる虚血性粘膜病変の合併率は,食道静脈瘤0.2%,胃静脈瘤5.6%であり,胃静脈瘤治療例の方が高かった.治療中は内視鏡画像,透視画像を確認しながら硬化剤を注入し,供血路以外の血管の描出や粘膜の虚血性変化を認めた際は,硬化剤注入を中止すべきと思われる.

  • 野口 達矢, 白井 保之, 木下 善博, 中村 綾子, 青山 浩司, 吉田 智治
    2018 年24 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    当院における胃静脈瘤内視鏡的治療後のNBCA排出時期について検討した.2010年3月より2016年2月までの間,当院で胃静脈瘤に対してNBCAを用いた内視鏡的硬化療法を行った25例26回のうち,当院で経過を追えた16例を対象とした.CT,上部消化管内視鏡検査,腹部X線写真でNBCA排出が確認できるまでの期間,合併症に関してretrospectiveに評価を行った.男女比10:6,年齢は36~83歳(平均65.8歳),Child-Pugh A/B/C=6/7/3であった.緊急10例(止血率100%),待機6例,予防0例であり,NBCA投与後は経過観察8例,EISL追加6例,B-RTO追加2例であった.排出までの期間は3か月以内に4例(25%),4~6か月に5例(31.3%),7~12か月に5例(31.3%),12か月以降(最長19か月)に2例(12.5%)であった.本検討では治療後87.5%の症例で1年以内にNBCAが排出されていた.また合併症としてNBCA排出時の出血を1例認めており,治療後はNBCA排出までの経過観察が必要と思われる.

症例報告
  • 沼本 勲男, 鶴崎 正勝
    2018 年24 巻1 号 p. 62-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    出血のリスクのある孤立性胃静脈瘤に対してはballoon-occluded retrograde transvenous obliteration (B-RTO)の有用性は確立されている.今回我々は胃静脈瘤に対してcoaxial double balloon catheter systemであるCANDIS®を流入静脈側まで挿入することにより,門脈からのアプローチを必要とせず,逆行性静脈造影にてHirota's grade 4であった例に逆行性にdual balloon-occluded embolotherapy(DBOE)を2例施行し得たので報告する.症例1は30歳代男性,胃静脈瘤に対してCANDISにて門脈本幹近くの流入静脈までカテーテルを誘導し,静脈瘤の上下流ともバルーン閉塞を行ったのち塞栓術を施行した.胃静脈瘤はその後縮小を確認した.症例2は70歳代女性,胃静脈瘤およびシャント型肝性脳症に対してCANDISにて門脈本幹までバルーンカテーテルを誘導し,塞栓部位を挟むようにバルーン閉塞を行い,閉鎖回路としたうえで同部を塞栓した.胃静脈瘤の消失および脳症の改善を認めた.いずれもCANDISの2つのバルーンにて閉鎖回路を作成し,閉鎖回路内を硬化剤で置換するDBOEの形で,良好な塞栓効果を得られた.

テクニカルレポート
総会・研究会 司会総括
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