肝臓は再生能を備えた臓器として知られており,その高い再生能により生体肝移植が可能となっている.肝臓の一部を外科的に切除した場合の再生は,基本的には残存細胞の肥大と増殖による.一方,肝毒素や胆管結紮などによる肝障害においては,門脈周囲に胆管様細胞が多数出現する胆管増生(ductular reaction)を伴って肝臓が修復/再生されることから,この胆管様細胞に肝の幹・前駆細胞(Liver progenitor cell, LPC)が存在すると考えられていた.しかし,近年の細胞系譜解析から,胆管増生を伴う障害において新たに出現する肝細胞は既存の肝細胞に由来するという報告と胆管あるいはLPCから肝細胞が生じるという報告があり,肝細胞の再生とLPCとの関係については議論が続いている.肝臓の幹細胞は,肝細胞と胆管上皮細胞に分化する増殖性の細胞と位置づけられるが,そうした幹細胞が成体肝臓に存在するのか,また再生過程にも関与するのかといった観点から,最近の報告をレビューするとともに,胆管増生の生理的な意義に関する私どもの研究についても紹介したい.
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