日本門脈圧亢進症学会雑誌
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総説
血管・リンパ管の構造と機能
平島 正則
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2020 年 26 巻 1 号 p. 9-12

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抄録

血管系とリンパ管系はからだのライフラインとして,それぞれが形態学的特徴のある独自のネットワークを作って,細胞外液・タンパク・細胞などの効率的な運搬に重要な役割を果たしている.血管は動脈・静脈・毛細血管からなる高次構造を形成して,全身に血液を循環させて組織に酸素や栄養素を供給し,二酸化炭素や老廃物を回収して,からだの成長と恒常性の維持に重要である.リンパ管は血管と密接な位置に分布して,毛細血管から組織内に出たタンパク・細胞や余剰な組織間液を吸収して血管に戻すことで,体液恒常性維持・免疫応答・脂質吸収・異物除去などに重要である.リンパ管の発生異常やリンパ節郭清を伴う手術などによって,リンパ管から静脈までの流路が途絶するとリンパ浮腫を生じる.リンパ浮腫に対しては,リンパ管細静脈吻合術によってうっ滞したリンパ液を静脈に流す治療法が開発されている.近年の研究で血中を流れる血小板が血管とリンパ管の吻合を抑制していることが分かってきた.最後に,門脈圧亢進症でみられる食道胃静脈瘤・脾腫などへの対策として,門脈血のうっ滞を抑えて,静脈瘤破綻のリスクや脾機能亢進症を抑える方法の可能性について考察する.

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© 2020 日本門脈圧亢進症学会
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