2024 年 30 巻 1 号 p. 21-29
経皮経肝門脈穿刺治療手技における穿刺部からの出血は重篤な合併症である.当院でも重篤な術後穿刺部出血を1例経験し,穿刺トラクト塞栓の手技を見直し,改良した.改良前は,ゼラチンスポンジと造影剤で作成した糊状塞栓液を血管造影用シースから穿刺トラクトに注入していた.しかし,シースが予想外に速く抜けたり,門脈へ塞栓液が流出したりと手技が安定せず,塞栓液が十分に停滞しないこともあった.改良後は,0.035 inchガイドワイヤー(GW)とマイクロカテーテル(MC)を並列にシースに挿入し,最初にトラクト内にMCから金属コイルを留置した後,塞栓液を注入するようにした.GWを残すことでシースの挙動が安定し,金属コイルにより塞栓液の門脈流出が最小限となり,トラクトに安定的に塞栓液を充填でき,停滞性が増した.金属コイル塞栓と糊状塞栓液の相乗効果により強固な塞栓になった.本法は安全なトラクト塞栓法と評価できた.