術後の門脈狭窄による門脈圧亢進症は,消化管出血,腹水,意識障害などの症状を伴い,著しいQuality of lifeの低下を招き,時に致死的となる.膵切除・肝切除術後の門脈狭窄に対して門脈ステント留置術が有効だった4症例の経験を報告する.症例1)82歳女性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除3年6か月後に門脈狭窄による腹水,意識障害が出現したため,経皮経肝的に門脈ステントを留置した.門脈圧較差は18.5→3.5 cmH2Oと低下し,症状は改善した.症例2)50歳女性.他院での肝門部領域胆管癌に対する拡大右肝切除術後9か月,門脈左枝の狭窄に対して経皮経肝的に門脈ステントを留置した.門脈圧較差は15→8 cmH2Oへ低下した.症例3)69歳男性.胆管癌に対する膵頭十二指腸切除5か月後に門脈狭窄による繰り返す消化管出血が出現した.経皮経肝的門脈ステント留置術,挙上空腸静脈瘤塞栓術を施行した.門脈圧較差23→0 cmH2Oと低下し,症状は改善した.症例4)77歳男性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除3か月後に門脈狭窄による腹水,消化管出血が出現した.大量に腹水があるため開腹での経回結腸静脈的門脈ステント留置術を行った.門脈圧較差は18→2 cmH2Oと低下し,症状は改善した.術後の門脈狭窄による門脈圧亢進症状出現時には速やかに門脈ステント留置を行うことで,状況を改善させることが可能である.
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