日本門脈圧亢進症学会雑誌
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30 巻, 1 号
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特別寄稿
Editorial
  • 加藤 悠太郎
    2024 年30 巻1 号 p. 10-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    門脈圧亢進症に対する外科的治療として,門脈大静脈シャント術や選択的シャント術など門脈血流を迂回させるシャント術,下部食道・胃上部への門脈血流を遮断して食道・胃静脈瘤の縮小を主眼におくHassab手術や食道離断術などの直達手術,その他脾摘術,肝移植,腸間膜静脈門脈バイパス術などがある.食道・胃静脈瘤に対して内視鏡あるいはIVRを用いた治療が第一選択となった近年,外科的治療の適応は少なくなっている一方で,非外科的治療が困難な症例に対する脾摘術やHassab手術は広く行われている.また近年の低侵襲外科手術の発達により,先進的施設ではこれらの術式は積極的に腹腔鏡あるいはロボットを用いて行われている.さらに門脈圧亢進症の原因が重度肝硬変などによる末期肝不全である場合には,臨床症状や病態の進行度を見極めて適切に肝移植の適応を判断することが重要である.

総説
原著
  • 大﨑 暁彦, 和栗 暢生, 渡邉 雄介, 佐藤 宗広
    2024 年30 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    経皮経肝門脈穿刺治療手技における穿刺部からの出血は重篤な合併症である.当院でも重篤な術後穿刺部出血を1例経験し,穿刺トラクト塞栓の手技を見直し,改良した.改良前は,ゼラチンスポンジと造影剤で作成した糊状塞栓液を血管造影用シースから穿刺トラクトに注入していた.しかし,シースが予想外に速く抜けたり,門脈へ塞栓液が流出したりと手技が安定せず,塞栓液が十分に停滞しないこともあった.改良後は,0.035 inchガイドワイヤー(GW)とマイクロカテーテル(MC)を並列にシースに挿入し,最初にトラクト内にMCから金属コイルを留置した後,塞栓液を注入するようにした.GWを残すことでシースの挙動が安定し,金属コイルにより塞栓液の門脈流出が最小限となり,トラクトに安定的に塞栓液を充填でき,停滞性が増した.金属コイル塞栓と糊状塞栓液の相乗効果により強固な塞栓になった.本法は安全なトラクト塞栓法と評価できた.

  • 佐藤 俊輔, 池田 裕至, 村田 礼人, 玄田 拓哉
    2024 年30 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    トルバプタンは難治性腹水の有効な治療法だが,血清ナトリウム(Na)値を上昇させることから欧米では低Na血症の補正に使用されている.そこで腹水に対してトルバプタンを開始した肝硬変78例を対象に,血清Na値に注目して治療効果と予後を検討した.トルバプタン開始時の血清Na値は腹水への効果と関連を認めなかったが,治療効果を問わず6時間および24時間後に有意な上昇を示し,治療前37.2%に認めていた低Na血症は24時間後に17.6%まで改善していた.次に予後に関する多変量解析では,24時間後のNa値が,肝予備能やフロセミド投与量などと共に有意な因子であった.なかでも24時間後の低Na血症は腹水への治療効果に関係なく予後不良だった.低Na血症は難治性腹水を伴う非代償期肝硬変の4割に認められ,トルバプタンの治療効果とは関係なく早期から改善する一方,低Na血症が持続する症例は予後不良であることが示された.

  • 和栗 暢生, 大﨑 暁彦, 渡邉 雄介, 佐藤 宗広
    2024 年30 巻1 号 p. 36-43
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】消化管静脈瘤や肝性脳症に対してBRTOやPTOなどが行われている.我々は経験的にChild-Pugh(CP)C症例も12点まではこれら治療を行ってきた.成績,忍容性について後方視的に調査した.【方法】2007~2021年にBRTOやPTOを行ったCP-Cの19例22回を対象とし,短期効果として治療前と治療2~3か月後の肝予備能を比較し,長期効果として生存を,忍容性は術後在院期間と合併症を指標として後方視的に評価した.【結果】治療した胃静脈瘤は全例で消失,94.1%の症例で肝性脳症も改善,CP scoreなど肝予備能は有意な改善をみた.1年,2年生存率は77.2%,50.0%で,生存中央値は784日であった.術後に腹水が増加する症例もみられたが,術後平均在院日数は21.5日であった.【結語】慎重な周術期管理を要するが,CP-12点まではBRTO・PTOの適応から除外せず行っていく方針である.

症例報告
  • 小暮 正晴, 川口 翔平, 蓮井 宣宏, 工藤 翔平, 百瀬 博一, 松木 亮太, 鈴木 裕, 宮内 亮輔, 小野 澤志郎, 阪本 良弘
    2024 年30 巻1 号 p. 44-51
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    術後の門脈狭窄による門脈圧亢進症は,消化管出血,腹水,意識障害などの症状を伴い,著しいQuality of lifeの低下を招き,時に致死的となる.膵切除・肝切除術後の門脈狭窄に対して門脈ステント留置術が有効だった4症例の経験を報告する.症例1)82歳女性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除3年6か月後に門脈狭窄による腹水,意識障害が出現したため,経皮経肝的に門脈ステントを留置した.門脈圧較差は18.5→3.5 cmH2Oと低下し,症状は改善した.症例2)50歳女性.他院での肝門部領域胆管癌に対する拡大右肝切除術後9か月,門脈左枝の狭窄に対して経皮経肝的に門脈ステントを留置した.門脈圧較差は15→8 cmH2Oへ低下した.症例3)69歳男性.胆管癌に対する膵頭十二指腸切除5か月後に門脈狭窄による繰り返す消化管出血が出現した.経皮経肝的門脈ステント留置術,挙上空腸静脈瘤塞栓術を施行した.門脈圧較差23→0 cmH2Oと低下し,症状は改善した.症例4)77歳男性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除3か月後に門脈狭窄による腹水,消化管出血が出現した.大量に腹水があるため開腹での経回結腸静脈的門脈ステント留置術を行った.門脈圧較差は18→2 cmH2Oと低下し,症状は改善した.術後の門脈狭窄による門脈圧亢進症状出現時には速やかに門脈ステント留置を行うことで,状況を改善させることが可能である.

  • 有間 修平, 松岡 俊一, 金子 朋弘, 十束 茉衣, 本田 真之, 石井 大雄, 松本 直樹, 増崎 亮太, 山上 裕晃, 小川 眞広, ...
    2024 年30 巻1 号 p. 52-58
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代女性.30歳代の頃よりC型肝炎を指摘されるも放置していた.X-5年に下血および意識消失を主訴に受診した.精査の結果,十二指腸静脈瘤破裂の診断でBRTOを施行し改善が確認された.その後C型肝炎の抗ウイルス治療でSVRを獲得し定期的に経過観察を行っていた.肝予備能の悪化なく経過していたが,十二指腸静脈瘤治療5年後に再発が確認された.マイクロバルーンカテーテルを使用したCARTO-IIを施行し十二指腸静脈瘤の改善を確認し,引き続き経過観察中である.消化管静脈瘤は再発を念頭に長期間の経過観察を行っていくことが重要と考えられた.

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