2024 年 30 巻 1 号 p. 30-35
トルバプタンは難治性腹水の有効な治療法だが,血清ナトリウム(Na)値を上昇させることから欧米では低Na血症の補正に使用されている.そこで腹水に対してトルバプタンを開始した肝硬変78例を対象に,血清Na値に注目して治療効果と予後を検討した.トルバプタン開始時の血清Na値は腹水への効果と関連を認めなかったが,治療効果を問わず6時間および24時間後に有意な上昇を示し,治療前37.2%に認めていた低Na血症は24時間後に17.6%まで改善していた.次に予後に関する多変量解析では,24時間後のNa値が,肝予備能やフロセミド投与量などと共に有意な因子であった.なかでも24時間後の低Na血症は腹水への治療効果に関係なく予後不良だった.低Na血症は難治性腹水を伴う非代償期肝硬変の4割に認められ,トルバプタンの治療効果とは関係なく早期から改善する一方,低Na血症が持続する症例は予後不良であることが示された.