日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
脾の瀰漫性動静脈短絡“diffuse A-V shunt”発現症例の肝動脈末梢血管抵抗の増大:門脈圧亢進症における血流動態的な肝脾相関について
杤尾 人司登尾 薫井谷 智尚真鍋 美香岸田 あおい戸田 進也
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2025 年 31 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

門脈圧が亢進した慢性肝疾患の脾内に超音波ドプラ法で認められる瀰漫性動静脈短絡“diffuse A-V shunt”(以下A-V shunt)は脾動脈血流の亢進を一つの原因として発現するが,脾動脈血流がなぜ亢進するのかは不詳である.今回,その原因として腹腔動脈を介してつながっている肝動脈の関与を考え,脾内A-V shunt陽性例と陰性例に分類し両者の肝動脈の血流動態を比較検討した.対象は慢性肝疾患184例224件の超音波データである.その結果,肝動脈の末梢血管抵抗(resistive index:以下RI)については,脾内A-V shunt陽性例(0.795±0.094,n=37)が陰性例(0.708±0.084,n=187)に比べ有意(p<0.001)に高値であった.経過観察中に脾内A-V shuntが陰性化した症例6例は全例陰性時に肝動脈のRIが低下していた.まとめ:脾内A-V shunt陽性例の肝動脈のRIは増大していた.脾内A-V shuntが発現した門脈圧亢進症には負のスパイラルともいえる血流動態的な肝脾相関が存在すると思われた.

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