抄録
肝硬変症における内因性nitric oxide (NO) 産生と肝循環, 門脈循環との関連について述べた.肝硬変症では腸間膜動脈領域, 肝類洞での内因性NOの産生が亢進している.腹部領域でのNO産生の亢進は肝硬変症の門脈, 肝循環と密接な関連があり, NOはその血管拡張作用により, 求肝性の門脈血流を増加させる.また, 肝類洞を弛緩し, 有効肝血流量を増加させる.以上の成績から, 肝硬変症における内因性NO産生の亢進は硬変肝の血流を維持するための代償機転である可能性がある.腸間膜動脈領域のNO産生の亢進は求肝性の門脈血流を増加させるが, 結果として門脈圧を上昇させる.