抄録
1992年から胃静脈瘤に対する組織接着剤による内視鏡的硬化療法 (以下本法) を導入し, 1997年までに17例 (計31回) に対して施行した.対象は全例肝硬変合併例で, 出血例10例, 予防例7例である.使用した組織接着剤は, α-cyanoacrylate monomer (CA) および, n-butyl cyanoacrylate (HA) である.その内訳は, CA (50) 2例6回, HA (50) 2例3回, HA (67) 6例12回, HA (75) 7例10回である (括弧内に組織接着剤の濃度を示した).出血例10例では, 初回治療に8例で組織接着剤を使用し, 全例で一時止血可能であった.全17例中11例で, 胃静脈瘤の完全消失を目的として内視鏡的治療を追加した.その結果, 胃静脈瘤は4例で消失, 9例で縮小, 4例が不変であった.消失した4例中3例は, 75%HAを使用した症例であった.高濃度のHA症例の方が, 追加治療の回数は少なかった.体循環, 門脈へのポリマーの流出を3例で認めたが, これらの症例を含め全対象群において重篤な合併症は認めなかった.本法は, 出血例において止血効果が高く, 高濃度, とくに75%HAであれば4mlを目安に注入することにより, 安全に胃静脈瘤を一期的に治療可能な方法と位置付けている.