日本門脈圧亢進症学会雑誌
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食道・胃静脈瘤に対する手術例の検討
-手術症例の推移とHassab手術の適応について-
大塩 博片寄 友力山 敏樹及川 昌也林 洋毅小野川 徹海野 倫明
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2005 年 11 巻 2 号 p. 160-165

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抄録

Hassab手術とは門脈圧亢進症に対し脾摘出術と食道下部・胃上部血行遮断を行う手術である.Hassab手術は単独では食道壁内性の供血路が遮断されないため食道静脈瘤の治療効果は不十分であることが多い.しかし, 内視鏡的硬化療法や結紮術が食道・胃静脈瘤の第一選択として普及しかつ十分な効果が得られている現在, これらを併用しながら脾機能亢進症を伴う胃・食道静脈瘤の治療として広く行われるようになっている手術術式である.今回, 当教室においてHassab手術を施行した食道・胃静脈瘤42例を対象とし, 我々が以前より導入しているHassab手術とEISの併用療法について焦点をあて検討したので報告する.その結果, 胃静脈瘤においては, Hassab手術単独でも術後15年の再発は認めなかった.食道静脈瘤に関してもEISを併施することにより術後15年での再出血は1例も認めず良好な成績を得ることができた.今回の検討ではHassab手術は胃静脈瘤に対しては十分な治療効果を期待できること, 食道静脈瘤に対する効果は十分といえないが, 術前後の内視鏡的硬化療法を1, 2回併施することにより長期にわたって十分な治療効果を得ることができることが明らかとなった.食道・胃静脈瘤治療は単独治療に偏従することなく, 個々の患者に最適な治療を見いだすべく, 種々の治療法の利点を組み合わせた併用療法も考慮すべきであると考えられた.

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