抄録
症例は75歳男性.食道静脈瘤治療のため紹介となった.67歳時を初発として, 度重なる食道静脈瘤破裂の既往をもつ.日本酒3合×40年間.貧血なし.肝障害は軽度, USG, dynamic CT, dynamic MRI, 血管造影, CTAP, 炭酸ガス動注下USGにてS4に径35mmの類円形の結節性病変を認め, この結節は動脈からの血液供給はほとんどなく, 門脈から栄養されていた.これ以外にも主として肝門部を中心に径1-4cmの同様の血行動態を示す結節性病変を多数認めた.明らかな脾腫は認めなかった.腹腔鏡では肝硬変を認めず, 結節の生検では腫瘍性変化を疑う所見はみられなかった.非硬変性の門脈圧亢進症に合併する再生性ないしは過形成性の結節性病変の病態を考えるうえで貴重な症例と考えられた.