抄録
肝硬変症158例を対象として, 全身循環・酸素需給動態, 肺循環・呼吸動態を測定した.高度肝障害例では軽度肝障害例に比べ, よりhyperdynamicな全身循環を呈した.心係数, 全身末梢血管抵抗, 動静脈酸素較差がそれぞれ血漿量と相関した.高度肝障害例では, 肺シャント率の増加, PaO2の低下, 肺血管抵抗の減少を認めた.全身酸素消費量は, 高度肝障害例の中でhyperdynamic stateを示さない症例において, 低下を認めたが, hyperdynamic stateを示した症例においては, 酸素消費量が維持されていた.肝硬変症のhyperdynamic stateには血漿量の増加が成因として深く関与しており, hyperdynamic stateはとくに肝障害の高度な症例において, 代謝の低下を代償していると考えられた.