日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
緊急精巣固定術により精巣被曝を回避して全腹放射線照射を実施した移動性精巣合併Wilms腫瘍の一例
穂坂 翔城戸 崇裕八牧 愉二福島 紘子小林 千恵福島 敬小野 健太郎新開 統子増本 幸二櫻井 英幸須磨崎 亮
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2018 年 55 巻 1 号 p. 37-40

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抄録

Wilms腫瘍の放射線治療開始前に移動性精巣が確認され,緊急手術により照射野外である陰嚢内に固定し遅滞なく治療を継続できた症例を経験した.

症例は3歳男児.Wilms腫瘍ステージIIIと診断され,日本Wilms腫瘍スタディグループプロトコールに則り腫瘍摘出術,術後化学療法,術後全腹照射を施行された.放射線治療開始前の画像検査,および身体所見で偶発的に移動性精巣が確認され,緊急手術により照射野外である陰嚢内に固定し遅滞なく治療を継続できた.

小児の移動性精巣は停留精巣と異なり一般的には手術適応がない.一方,小児がんなどの基礎疾患に対して腹部照射を予定している症例において停留精巣や移動性精巣が併存していると,不要な性腺被曝や将来的な男性不妊が生じる可能性がある.腹部照射を行う際には特に移動性精巣の有無について慎重に確認する必要がある.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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