日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
横隔膜ヘルニア,先天性肺気道奇形(CPAM)と鑑別を要したDICER1遺伝子変異を伴う胸膜肺芽腫の一例
阿部 仁美浜田 聡屋冝 孟屋良 朝太郎上原 朋子屋良 朝雄玉城 昭彦佐辺 直也新垣 京子百名 伸之中西 浩一
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2020 年 57 巻 2 号 p. 168-172

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抄録

症例は生来健康な1歳男児.主訴は咳嗽,発熱,多呼吸.レントゲン所見から横隔膜ヘルニアが疑われ紹介となり,血液検査および画像検査にて感染を合併したCPAMと診断された.抗菌薬投与により症状は改善したが,その後症状が再燃したため肺部分切除術を施行した.病理検査で胸膜肺芽腫の診断に至り,切除断端は陰性であった.腫瘍細胞の遺伝子解析でDICER1遺伝子にホモ変異が検出されたが,生殖細胞変異は認めなかった.術後化学療法(IVADo療法)を施行し,終了後9か月時点で寛解生存中である.胸膜肺芽腫は稀な予後不良の悪性腫瘍であり,一部では様々な悪性疾患に関連するDICER1遺伝子変異を有する.本症例より嚢胞性肺病変の鑑別診断として,胸膜肺芽腫を念頭に置くべきである.また今後再発や遠隔転移の可能性も含め,長期的なフォローを要する.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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