2020 年 57 巻 2 号 p. 85-91
受容体チロシンキナーゼをコードするALK,ROS1,NTRK1,NTRK2,NTRK3が形成する融合遺伝子は,様々ながん腫で報告されており,分子標的薬の研究や臨床応用も進められてきた.近年,これらの融合遺伝子が小児脳腫瘍においても比較的高頻度に検出されることが明らかにされた.特に乳幼児の神経膠腫において頻度が高いが,他の稀な病理組織型の症例からの報告も増えつつある.また2019年には本邦でもNTRK阻害剤が小児固形腫瘍に対しても使用可能となった.これまでの知見をふまえた上で,今後,さらなる分子標的薬の臨床応用が求められると同時に,融合遺伝子を有する症例の病理像や臨床像,分子標的薬の適応となる症例の選択や最適な使用法,耐性化の機構やその対策が明らかにされていくことが求められる.