【緒言】急性白血病の中枢神経系(central nervous system; CNS)再発に対する治療は,従来のモダリティを使い果たした状況下ではchallengingな課題である.【症例】10歳のときにmixed-phenotype acute leukemia with BCR-ABL1を発症した女児.寛解導入療法に抵抗性,dasatinibの効果も一過性で,父親から骨髄移植(bone marrow transplantation; BMT)を施行した.12歳時にCNS再発および骨髄分子再発を来した.CNSに頭蓋脊髄照射を施行,さらに骨髄中の微小残存病変に,母親(非BMTドナー)末梢血由来のリンパ球を静脈内投与して分子寛解を得た.13歳時にCNS再々発した.母親リンパ球髄注療法を開始した.初回投与の1週間後,髄液中の細胞は髄注した母親由来ではなく父親型リンパ球に置換され,BCR-ABL1陽性白血病細胞は消失しており,随伴症状も消失した.効果は2か月持続した.【考察】髄液中の父親型リンパ球は活性化しており,患者の末梢血から動員されたと推察した.本髄注細胞療法にはサイトカイン療法的な効果もあり,移植ドナー由来リンパ球の白血病細胞に対するアナジーを克服しうる可能性も考えられた.【結語】本法は有効かつ安全に施行できた.細胞免疫療法の意義を考える上で非常に示唆に富む知見が得られた.