2020 年 57 巻 2 号 p. 96-100
小児固形腫瘍のような希少疾患の研究において,国際共同研究は重要な手段である.現在,JCCGの固形腫瘍分科会でも肝腫瘍,腎腫瘍,頭蓋外胚細胞腫瘍を対象とした3つの国際共同研究に取り組んでいる.国立成育医療研究センターの固形腫瘍データセンターでは現在これらの研究の支援を行っているが,研究実施体制だけでなく,臨床データ収集や有害事象報告等において本邦の臨床試験とは異なる固有の手順に対応する必要があるほか,特に米国との臨床試験では参加するための施設や研究者の資格の取得や管理において厳密なルールに従う必要があった.また,本邦に期待される症例数達成のための協力施設の確保や,対象がAYA世代にも発症するがんの場合には成人領域のグループとの協働など,本邦での実施体制の整備が必要な場合もあると思われた.一方,米国から求められた臨床情報のデータセンターでの一括代理入力には問題も多く,今後の共同研究のあり方に関する課題と思われる.また現在はまだ大きな問題となっていないが,海外との情報収集や情報提供,あるいは本邦の臨床研究法との関連で今後問題が生じる可能性も否定できない.国際共同研究支援については,このように協働する海外の研究グループや臨床研究の性格等による差が大きいこともあって,データ管理をはじめとする支援について当面は経験を積んで問題点を洗い出し,その解決を模索する段階が続くものと考えられる.