2020 年 57 巻 3 号 p. 227-234
先天性血小板減少症・異常症(本症)は,血小板の産生・機能の異常に起因する多様な疾患の総称である.慢性・難治性ITPの10%程度は本症といわれており,ITPとして長期ステロイドや摘脾などの誤った治療を受けている例もある.MYH9異常症では進行性の腎合併症・難聴を合併し,転写因子異常を伴う本症では悪性腫瘍に進展しうる.ハイスループットの遺伝子解析によって,その責任遺伝子が明らかになりつつあるが,半数は未だ病因不明である.2018年,AMEDからの研究費を受けて国立成育医療研究センター内に中央事務局を置いてレジストリを構築し,全国から臨床情報と生体試料の収集を開始した.既知の56遺伝子からなるパネルを作成し,次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査体制を確立し,ナショナルセンターバイオバンクとの連携も整えた.2020年6月までに85例をレジストリに登録し,遺伝子パネル解析を70例,蛋白解析を50例について実施した.その結果,MYH9, WAS, VWF, ITGA2B, ITGB3, RUNX1, ANKRD26, ACTN1, ETV6, CDC42, FLNAなどの病的バリアントを検出した.既知の遺伝子異常が見つからない例には,全エクソン解析による原因遺伝子探索を実施している.診断・登録・検体保存体制の確立によって,本症の病態解明が進み,適切な治療・管理方針の選択に貢献できるであろう.