日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
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原著
小児血液腫瘍診療における抗菌薬適正使用支援プログラム(Antimicrobial Stewardship Program)導入の有用性
高地 貴行荘司 貴代宮越 千智宇津木 博明平田 健志小野田 薫神園 万寿世卜部 馨介牧野 理沙小松 和幸川口 晃司小倉 妙美堀越 泰雄渡邉 健一郎
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2021 年 58 巻 1 号 p. 6-11

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抄録

Antimicrobial stewardship program(ASP)による抗菌薬使用の見直しは,薬剤耐性菌の減少,医療コストの削減,医療現場への教育的側面が期待される.小児血液腫瘍診療に対し2014年9月にASPを導入した効果を検証した.発熱性好中球減少症(FN)に対しては原則Cefepime(CFPM)投与とし,Tazobactam/piperacilline(TAZ/PIPC)とMeropenem(MEPM)を制限した.2010年10月から2018年8月まで,ASP導入前,移行期,成熟期の3期に分け,Day Of Therapy/1000 patient-days(DOT),アンチバイオグラム,感染症死亡例について検討した.成熟期DOTを導入前と比較すると,CFPMは3.95倍の増加に対し,TAZ/PIPC,MEPMは0.34倍,0.13倍と減少した(p<0.01).グラム陰性菌に対するCFPMの抗菌活性は70%程度でβラクタマーゼ産生耐性菌の影響と考えられた.緑膿菌に対するTAZ/PIPCとMEPMの薬剤感受性は,移行期は90%未満となったが成熟期に90%を超えた.FNに対しMEPMとTAZ/PIPC使用が激減しても移行期以降重症感染症は増加せず,感染症関連死亡に影響なかった.感染症専門医の協力のもとASPは血液腫瘍診療において有用である.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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