2021 年 58 巻 3 号 p. 292-295
小児がんの4–5%に脊髄圧迫が見られ,多くの脊髄腫瘍は脊髄圧迫症状を契機に診断される.脊髄腫瘍はオンコロジックエマージェンシーであり,成人では治療開始前の神経障害の程度が治療後の神経学的転帰に関連すると報告されている.今回我々は,脊髄圧迫症状を契機に診断に至った小児腫瘍性疾患を4例経験した.対象症例は4か月~11歳であった.発症から画像診断までの期間は3~36日であり,腫瘍部位は硬膜外2例,硬膜内髄外1例,髄内1例だった.病理組織学的検査の結果Ewing肉腫,悪性ラブドイド腫瘍,急性骨髄性白血病と診断した.診断時に完全麻痺(Frankel A)であった1症例は運動機能の回復は得られなかった.一方,診断時に運動機能が残存していた(Frankel B, C, D)3症例では運動機能の回復(Frankel D)が得られた.完全麻痺に至る前の介入が神経学的予後の改善につながると考えられた.