日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
病理組織学的に残存した肝転移巣に対し無治療経過観察が可能であった乳児神経芽腫の治療経験
松尾 星弥鈴木 孝二吉川 利英山口 愛奈今村 好章小川 絵里岡本 竜弥谷澤 昭彦大嶋 勇成
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2021 年 58 巻 3 号 p. 301-305

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抄録

生後9か月の女児.左副腎腫瘍の精査目的に当科紹介となった.Children’s Oncology Group(COG)リスク分類で中間リスクの神経芽腫と診断され,多剤併用化学療法が行われた.化学療法5コースの寛解導入療法後に原発巣の摘出術および肝転移巣の生検術が行われた.原発巣および肝転移巣には病理組織学的に神経芽腫細胞の残存が確認されたが,術後1コースの化学療法で治療を終了とした.治療終了時の肝転移巣はMRI検査,MIBGシンチグラフィでも残存が確認されていたが,追加の治療を行わずに経過観察とし,治療終了後2年1か月,再発なく経過した.良好な生物学的因子を有する神経芽腫においては,たとえ病理組織学的に神経芽腫細胞の残存が確認されたとしても,寛解導入療法後に経過観察とすることも検討する必要があると思われた.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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