2023 年 60 巻 3 号 p. 199-206
17;19転座型急性リンパ性白血病(t(17;19)-ALL)は,予後の極端な悪さ故に,特に留意すべきcommon ALLの一病型である.10歳以上が目立つ(約70%)ことを除けば,約70%が初発時白血球数2万/μL以下であるなど,特段の予後不良因子を持たないことが多い.ところが,17;19転座より産生されるTCF3::HLF (E2A-HLF)キメラ転写因子が,強力なアポトーシス抑制機能を持つため,白血病細胞は頑強な治療抵抗性を獲得する.染色体検査上17;19転座の同定が難しく,しばしば正常核型と誤認される点も留意すべきである.TCF3::HLFは,アポトーシス関連因子に加え,LMO2,CD33,PTH-rP,ANNEXIN IIなど,さまざまな遺伝子を直接・間接に異常発現させる.この結果,t(17;19)-ALLの半数程度の患者が,CD33陽性,高Ca血症,凝固異常など,common ALLとしては稀な症状を示すので,年長児で,これらの症状を示す正常核型のB前駆細胞ALLは,t(17;19)-ALLを疑い,RT-PCR法によるキメラ検出を試みるべきである.B細胞系ALLの0.5~1%程度と頻度は高くないが,通常治療での治癒は望めないので,当初よりTCF3::HLFキメラ検出を行い,診断確定によりblinatumomab投与やCAR-T細胞療法など,最新の治療法を駆使した強力な治療を行う必要がある.