17;19転座は小児の急性リンパ性白血病(ALL)においてまれな転座型であるが,予後は極めて不良であった.特にvincristineとcytarabineに対してin vitroで有意に耐性を示し,寛解導入療法後も微小残存病変が高レベルで保持され,低容量cytarabineを含む早期強化相で再発する場合も多い.本転座ではTCF3::HLF融合遺伝子が形成されるが,小児ALLではTCF4::HLFやTCF3::TEFも同定されている.TCF3::HLF自体による細胞死抑制が難治性の要因であるが,P-glycoproteinの発現やRAS経路遺伝子群の変異も背景要因になっている.また,4割前後の症例で診断時に高カルシウム血症を伴い,溶骨病変によって造血環境が荒廃して化学療法後の造血回復が遅延することも難治性に関連すると考えられる.同種造血幹細胞移植における移植片対白血病効果では,ドナー由来の細胞傷害性T細胞がTRAILを含む細胞傷害因子を介して白血病細胞に細胞死を誘導する.17;19転座陽性ALLでは,TCF3::HLFが細胞傷害因子のTRAILに対するdeath受容体の発現を誘導し,TRAILの抗白血病効果に対して高い感受性を示す.この特性を標的にしてblinatumomabもしくはCAR-T細胞療法によって病勢のコントロールを図り,引き続き同種造血幹細胞移植を行うことで完治が期待できるようになりつつある.