日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2:胚細胞腫瘍Update
小児頭蓋外胚細胞腫瘍に対する治療戦略の進歩と課題
狩野 元宏黒田 達夫
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2023 年 60 巻 3 号 p. 220-227

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抄録

胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor; GCT)は性腺のほか,正中を中心に多様な臓器が原発部位となる腫瘍の一群である.発症年齢や原発部位によって好発する組織型や治療反応性が異なるため,小児腫瘍医が扱うGCTは非常に多様で,複数の病期分類から適切なものを選択して評価し,治療にあたらなければならない.腫瘍マーカーとしては乳酸脱水素酵素,αフェトプロテイン,ヒト絨毛ゴナドトロピンが代表的だが,近年血清miRNA(miR371-373, miR 302-367clusters)が新たなバイオマーカーとして期待されている.

2015年にMalignant Germ Cell International Consortium(MaGIC)は年齢11歳以上,性腺外,Stage IVをリスク因子とする新たな小児頭蓋外胚細胞腫瘍のリスク分類を提唱した.この新リスク分類をもとに,低リスク群に対する積極的経過観察と,標準リスク群に対するカルボプラチンの有用性を評価する臨床研究AGCT1531が本邦でも進行中である.また上記血清miRNAに加え腫瘍の遺伝情報などの解析も徐々に知見の積み重ねがあり,今後これらを元にした層別化が期待される.GCTは20世紀で最も治療成績が向上した悪性腫瘍といわれるが,未熟奇形腫や高リスク症例に対する標準治療は未確立で,今後本邦でも早急に体制を整備して予後向上にむけた新たな治療開発をしなければならない.GCTは希少がんであり,本邦でもMaGICのように領域横断的に複数診療科が連携して本症の治療開発に取り組む必要があると考えられる.

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© 2023 日本小児血液・がん学会
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