日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2:肝芽腫に対する外科治療 肝移植VS高難易度肝切除
肝移植時代における進行肝芽腫に対する非定型的高度肝切除術
松浦 俊治前田 翔平梶原 啓資内田 康幸鳥井ケ原 幸博馬庭 淳之介髙橋 良彰川久保 尚徳田尻 達郎
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2024 年 61 巻 2 号 p. 144-147

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抄録

肝芽腫に対する肝移植は2008年4月に保険収載されてから約15年が経過した.切除不能肝芽腫が肝移植適応とされるが,「切除不能」の判断は必ずしも容易ではない.一般的には,化学療法後においても4区域へ腫瘍進展が認められる場合(POST-TEXT IV)や腫瘍が3区域に限局していても主要な脈管に浸潤が疑われる場合(POST-TEXT III P+, V+)には切除不能と判断される.しかし,術前画像診断で切除可否を判断することが難しい場合もあり,仮に切除可能と考えられるような場合においても,肝移植に対応し得る施設での最終判断と手術が推奨されている.かつては,肝切除後再発などを理由とした救済的肝移植は,移植後の成績が著しく悪いとの報告から,切除可否が疑わしい症例は肝移植を優先させることが無難であると考えられていた.しかし,近年,わが国からの報告も含め,救済的肝移植の成績が決して悪くないとする報告もあり,肝移植後の長期的な合併症発症のリスクを考え併せると,移植を回避するためのチャレンジングな肝切除という治療選択も改めて見直されつつある.本稿では,血管再建や臓器保存などの移植手術の際に用いる技術を応用した肝切除術や残肝容量不足に対する対策など,非定型的高度肝切除術の概略と可能性について概説する.

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© 2024 日本小児血液・がん学会
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