2024 年 61 巻 2 号 p. 154-158
小児脳腫瘍は希少疾患である.医師個人が経験できる症例は限られているため,個人の経験と直感に基づいた治療方針の決定は患者に有益とはならず,可能な限りの治療の均てん化は必須であろう.そのためには集約化のみでなく,一例毎の情報と経験の共有が大変重要となる.
当院では小児脳腫瘍の診断治療にあたり,脳神経外科・小児科・放射線治療科を主体とする小児脳腫瘍キャンサーボードを中心としたシームレスな診療体制を構築している.週1回定期的に開催し,治療中の患者の情報共有,新患紹介と治療方針の検討,転科調整等を行うことで,経験症例の共有・治療効果の客観性の確保・治療タイムラグの減少が可能となっている.全症例を本ボードで検討し,診療科に拘らない適切かつ迅速な初期対応・治療を志している.
2013年に当院が小児がん拠点病院に選定されてから,161例の20歳未満初発小児脳腫瘍患者の治療を行った.初発から対応したのは150例であり,内訳は低悪性度神経膠腫28例,悪性神経膠腫22例,上衣腫9例,胚細胞腫瘍27例,髄芽腫等の胎児性腫瘍21例等であった.初発時診断では,本ボード上での協議で9例(胚細胞腫瘍6例,低悪性度神経膠腫3例)が組織診断なしでの診断確定を合意し,後療法を施行した.治療後残存病変に対して追加摘出術に関しても,必要性や時期は本ボード上の協議にて決定された.年齢に応じた治療方針や晩期障害を見据えた化学療法・放射線治療の選択,他施設からの相談症例に関しても本ボードでの討議事項である.治療に関わる複数科医師での合意・共通疾患認識が重要であり,本ボードがその中心の役割を果たしている.