日本小児血液・がん学会雑誌
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学術賞講演1
本邦初の患者由来異種移植マウスモデルを用いた小児急性リンパ芽球性白血病バイオバンクの樹立
田中 邦昭加藤 格豊田 秀実後藤 裕明
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2024 年 61 巻 2 号 p. 165-175

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抄録

再発・難治小児急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia: ALL)は未だ予後不良であり,病態や治療開発研究は喫緊の課題である.しかし,希少性から十分な研究に使用可能なリソースの確保の困難さが障壁となっている.今回我々は,小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group: JCCG)再発ALL委員会において収集された患者検体を中心とした57系統の小児ALLの患者由来異種移植(patient-derived xenograft: PDX)マウスモデルを樹立し,PDX細胞を保存することにより本邦初の小児ALLのPDXバイオバンクを設立した.我々はPDXマウス,及び,PDX細胞が由来する患者検体の病理学的特徴と分子遺伝学的特徴を再現していることを示した.加えて,PDX細胞の80種類の網羅的なin vitro薬剤感受性データを取得し,その特徴がPDXマウスを用いたin vivo薬剤感受性の結果と一致した傾向を示すことを確認した.また,PDXモデルが治療によるクローン選択を再現することも示した.我々のPDXバイオバンクは小児ALLの病態・治療開発研究に有用なリソースを広く提供することを目的として,実中研と協力し体制整備を進めている.

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