2024 年 61 巻 3 号 p. 209-213
日本のがんの年間死亡者数は約38万人で死因の第1位である.がんの治療法は年々進歩しているものの,治療抵抗性のクローンが再発し予後不良となる.がんの再発の主な原因として治療抵抗性のがん幹細胞が存在することが問題となっているが,その検出は困難で,臨床で用いられる検出法は確立されていない.最近筆者らは,ハイドロゲルゲルの上にがん細胞をまくと,24時間以内に急速にがん細胞のスフェロイドが形成され,SOX2などの幹細胞マーカーの発現が増加し,がん幹細胞が創り出されることを発見した.これはゲルによりがん細胞にリプログラミング(初期化)が誘導されること意味しており,ハイドロゲル活性化リプログラミング(hydrogel activated reprogramming, HARP)現象と名付けた.今後このHARP現象を基盤とする新しいがん幹細胞マーカーの発見,がん幹細胞治療薬開発への応用が期待されるが,本稿ではこのHARP現象について,発見の経緯,現在解明されているしくみ,将来展望について概説したい.